Monday, March 15, 2010

無題

電話をかける。商品の問い合わせをするためだ。十回くらい鳴ってやっと出る。鼻にかかったきんきん声。私はすでに苛立ち始めている。

「ありごとうございます!」

「あの~」

「アニマル・ホスピタル、ルミネエスト新宿東口店――」

「あの~」

「――店長の丸山がうけたまわりまーす!」

電話で対応してくれる店員というのは、一概に自己主張が激しい。彼女たちはビル名、店名、それから自分の名前、下手すると役職まで一気に言い終わってからでないとお客に喋らせてくれないのだ。相手より先に名乗るというのは悪い心がけではない。しかしそれも、時と場合を選んだほうがいいように思う。

何度こういう場面に出くわし、ひどく腹を立てながら、それを爆発させられないで苦しい思いをしてきたことか。思い出すだけでも、怒りのあまりキーボードを打つ指先に妙な力が入ってしまう。

彼女たちはそれほど悪くない。ただ融通がきかないだけなのだ(それから頭が悪いだけなのだ)――そう自分に言い聞かせても、怒りを静められるほど私は人間が出来ていない。

あからさまな舌打ちや、保留中の暴言、それでも苛立ちが治まらないようなら、電話を切りつつ受話器を投げつけることも珍しいことではない。

こういう時、固定電話でないのは張り合いがないものだ。乱暴に受話器を置くことができないのだから。

「ガチャン!」と受話器を置く気持ち良さを最近味わっていない。あまりにも勢いをつけすぎて、うまく電話を切れていなかったなんてことも、そういえばよくあった。

私は人生において人より多く受話器を取ったり置いたりしてきた。なにしろ私は、過去にテレホンアポインターだったことがあるのだ。
家庭の主婦相手にたいして役に立たなさそうなものをセールスしていたのだが、けっこうきついことも言われたものだ。死人が出て忙しいんです!と言われたこともあった(こう言っては何だが、信ぴょう性に欠ける言い訳だと思わずにはいられなかった)。

嫌な主婦も多かった。

説教する主婦、ものすごく毒舌な主婦、不幸自慢主婦、思わせぶりな主婦(これが一番嫌だった)、いろんな主婦がいた。いろんな主婦にいらいらさせられた。

こっちが頑張って長ったらしいマニュアルのあいさつを読み上げている途中で「けっこうです!」と言葉をかぶせる主婦は本当に嫌みだった。全部言わせてくれないと、喉の奥に何かがへばりついているみたいな気持ち悪さが残った。人の努力を踏みにじりやがって、と湯気が出そうなほど頭にきたものだ。

そうなんだ。自己主張の激しい店員だって同じなんだろう。最後まで言わせてくれよ!と思っているんだろう。

私という奴は……。同じ辛さを知っていながら、あれほど恨んだ主婦と同じ行動を取るなんて。

まあいい。少なくとも私は、あれらの店員たちのようにきんきん声を出したりしないのだから。

2 comments:

  1. 僕もテレオペしてました。
    やな奴いますね。ごりどおしする奴とか。
    客とはいえ、会社が客を評価して且つ悪評価な客の場合は、

    ガン!として受け付けない体勢にすれば「わがままな客」も
    少しは減るんじゃないかなあ。


     こういうブログがあるとは知らずでした。
     前に泊まるビデオ屋でしばしば借りました。

     山谷の話が「おーおー」と思ったのでコメントします。
     ああいう状況でナイト『発揮』されないときもあるね。

     それと六本木に大枚使わないと会えないの???

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