Tuesday, December 7, 2010

雷鳥を食べる

今回のブログには、見る人によっては不愉快な写真を含みます。心優しい方はここで閉じるようお願い申し上げます。悪趣味な方のみご覧ください。






雷鳥を食べに行った。もちろん、国産の物は天然記念物で食べることなどできないので、今回私が食べたのは、外国から輸入された雷鳥だ。

はじめは、ただの鳥だろう、とあなどっていた。さぞ淡白な味なのだろう、と思っていた。

お店の方は親切にも、調理前の雷鳥を見せてくださった。これが、やわらかくて可愛いのなんのって。だが、いくらこれを見せられたところで「ただの鳥だろう」という考えに変わりはなかった。


頭部のカラフルさは生前の姿を思い描く手助けになってくれるが、この鳥肌感がなんとも普通の鳥である。鳥を食べるのはごく当たり前の事。だから実感がわかなかった。

フレンチの洗練されたメニューを数皿味わった後、ついにメインディッシュが登場した。


可愛い雷鳥は変わり果てた姿に……。

ソテーした肉の周りには、フォアグラにかかっているようなソースがたっぷり。それから、内臓のソーセージ。

姿焼きで来るのを想像していたので、いささか拍子抜けである。これならばわけなく食べられるだろう。そう思っていた矢先――

空調に乗って、得も言われぬ香りが漂ってくるではないか。同じテーブルに着いている誰もがそのことを話し始めている。

臭い!なんて臭いのだろう!これが雷鳥の臭いなのか!

全員が度肝を抜かれてしまい、なかなか口に入れることができなかった。恐る恐る近づき、もっとよく臭いを嗅いでみる。すると、肉も十分臭いが、内臓でできたソーセージときたらもう!


私はまれに見る卑怯者だから、誰かが(できればみんなが)食べてみて、無事だとわかるまで絶対に得体の知れぬものを口に入れたりはしない。今回も七人中ほぼ最後に味わってみた。

感想は……最高に野性的なお味だった!

噛み締めれば噛み締めるほど、口中を満たす獣っぽい風味。信じられない。鳥じゃなかったのか?ハイエナでも味わっている気分だ。

肉でもそれだけすごいのだから、ソーセージのインパクトはもう、大変だった。

何とも言えない食感、肥料みたいな臭い、苦み。私は大便を食べたことなどないが、きっとこんな味がするんだろうと確信した。

さすがに二口でギブアップだ。

一緒にいた真性マゾの友人は、周囲から無理矢理食べさせられる感じがたまらなかったらしく、嫌がりながらも積極的に食べていた。

彼女の反応を見る事が出来ただけでも、雷鳥を食べに行ったかいがある。

みんな、なんだかんだ言っておきながら、こんなにきれいに完食しました。


今回の経験で、私はまた一つ大人になった。

ああ美味しかった、また食べたい、とは決していえない料理だったが、心の底から食べに行ってよかった、と思った。

あんなにも多くのことを学べたのだから。

まず、珍しいからといって美味しいわけではないという当たり前の事を、今更ながら強く実感した。

見た目の可愛らしいものは淡白な味に決まっている、そんな固定概念も見事に払拭させられた。

そして、やっぱり私は東洋人なんだということ。

思い切り和風だとか、徹底的に臭いを抜いて、スパイシーに仕上げるとか、そんな風に調理してくれていたら、こんな思いはせずに食べられたかもしれない。

しかしそこであえて、あまり日本人の口には合わないであろうフルーツのソースでで仕上げ、なめてかかっていた私を戒めてくれたフランス帰りのシェフに敬意を示したい。

フランスに行った時は、それほど文化の違いを感じなかった。むしろ、日本よりフランスのほうが性に合うと思ったくらいだ。食べ物も思っていたよりずっと美味しかった。

だが、今回日本にいながらフランスの奥深さを見せつけられた気がする。

それからもう一つ。

この雷鳥料理はものすごく赤ワインに合うということもわかった。

ワインなしでは臭くてたまらなかったものが、ワインで流し込んだら、初体験の美味しさの扉が開いた。


これまで、ある特定のワインを美味しいと思ったことなら何度かあるのだが、食事と組み合わせて美味しいと思ったのは初めてだった。私がいいレストランで食べるようなフランス料理を苦手な理由がわかった。ワインなしでは味気ないからだ。

もっとアルコールに強かったら、この雷鳥料理も美味しく楽しめたろう。そうと思うと、下戸の自分が情けない。


なにはともあれ、本当に雷鳥を食べてよかった。しなくてもいい経験をするのって大切なことだ。


3 comments: